「彼女――上野江梨子の意識を戻して欲しい」と願う今回の依頼人・クラスメートの下野に、「上野さんの意識を選ぶか、下野自身の命を選ぶか」という選択肢を出してから、二日後。

夏休みに入った俺はトラブルに巻き込まれる事もなく、下野から選んだ答えを聞かされる事も無く、新たな依頼を持ち込まれる事も無く、ただただ宿題をこなしていた。



目立つ赤髪と赤い目の所為で巷的には留学生という立場になっている俺は、「母国に帰る」と言えば進学する必要は無い訳で。

しかも俺の学力からすれば、受験勉強なんてしなくても、どっかの高校が拾ってくれるから、汗まみれになりながら公立高校の入試過去問を解く必要も無い。

つまり、宿題なんてどうでも良い。


赤髪で赤い目なのは留学生でも何でもなくて、吸血鬼として先祖返りしすぎて、赤い目や血の色が濃く出すぎただけなんだけど。

受け継いだ物は効率良く使うに限る。





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