「傷ついた?」


「なにがですか?」


「その、うちのシマウマちゃんに
 似てるって言われて…」


「ああ・・・、
 大丈夫ですよ、気にしないでください」


「ならよかった、
 君の顔を見れば見るほど思い出すよ」


「そうですか・・・」


正直、ハムスターに似てるって言われても嬉しくはない。

なんだか悲しいような微妙な気持ち。


しばらくして、

バスは新荘のバス停に止まった。

おばあちゃんが一人降りて、

男子高校生が三人、寒そうに乗ってきた。


そして再びバスは動き出す。

五分もしないうちに、

バスの右側に東京スカイツリーが見えてきた。


「スカイツリー、
 もう上ったかい?」


男が窓の外を見ながら言う。


「・・・いえ、
 私、高いところが苦手なんですよ」


「おや、それは残念だね。
 なにかトラウマでもあるの?」


「・・・小さい頃に、ちょっと。」


「そっかそっか・・・」


そう言って男は目線を落とした。

バスからはもう、

スカイツリーは見えなくなっていた。