そういえば職場を出る前に、

上司に「おばあちゃんのニオイがするね」って言われた。


おばあちゃんのニオイって・・・

上司が言うには、ピーナッツの香りに近いらしく、

決して臭いニオイではないと言うが、

おばあちゃんのニオイがするって言われても

嬉しくもなんともない。

むしろなんか沈む・・・。


こういうデリカシーのなさが、

部下のやる気をドンドン下げていくんだと思う。

おかげで今日もドッと疲れた。

そう遠くないバス停までも、

足が重くて正直辛い。


ちびっこ公園を右に曲がり、

街灯を3つ数えた先に波川のバス停は見えた。

ぼんやり光るバス停に、

中年男性が2人立っている。


私が近づくと、二人共こちらを見て

一人は目線を携帯へ戻し、

一人は私をジッと見つめた。



「宮脇転写堂の、桐山さんですか?」


さっきまで忘れていた取引先の名前が、

どこからかコロっとでてきた。


「はい、そちらは・・・愛育写さんの?」

「はい。頼まれた書類を渡すように言われて・・・」

「そっかそっか。ありがとう」


書類を受け取った桐山という男は

どこか嬉しそうで、

どこか悲しそうな。

そんな顔をしていた。