ーードンっ

帰る途中、誰かとぶつかった。

暗いから、人がいるなんて分からなかった。

「あ゛なんだてめぇ。謝れや!」

ウザイウザイウザイウザイーー

綾「黙れ」

「あ゛?てめえ誰に口聞いてんだよ」

綾「知らねぇ、誰だよお前」

「なっ!!俺はなぁ、あの銀牙だぜ?!」

銀牙ねぇ。

ただの雑魚じゃん。

綾「へぇ、銀牙。じゃあ銀牙さんよぉ、お前も謝るなら今だぜ。」

「あ゛?誰がてめえなんかに」

綾「俺はなぁ今無償に腹が立ってるんだ。ちょっとは…楽しませてくれるんだろうなぁ?」

そう言うと男は顔を真っ赤にさせて殴りかかってきた。

綾「おせえよ」

それを避けて鳩尾を蹴る。

「ちっ!おらぁ!」

それでも男は立ち向かってくる。

そんなことをして何になるのだろうか?

私は思い切り殴った。

喧嘩はいいんだ。

嫌なことをすべて忘れられる。

だから、きっとあいつらの事も忘れられるはず。

あの時だってそうだった。

ただがむしゃらに喧嘩して…

何一つ守る事が出来ない。

そう、私は弱い。

違う、弱かったんだ。

今は違う。

私は弱くない。

弱くないんだ…

ーーガンッ

顔面を真っ赤にさせた男を見ても何も思わない。

あぁ、なんでこんなことしてるんだろ。

昔大ちゃんに教えてもらったじゃん、

こんなことしちゃダメだって。

だけど、もうそう言って叱ってくれる大ちゃんはここにはいない。

優しく笑ってくれるみんなもいない。

私は、ひとりぼっちなんだ。

この広い空間に…

綾「あははははははっ……くそっ…」

溢れ出した涙は、止まる事を知らなかった。

それは、私がここに来て始めて流した涙だった。