「あなたが? どういう事かよく解らないわ。解りやすく説明して?」

「わかった。君がナナという人格を形成しているのは、CPUを中心としたチップセットと記憶装置なんだ。そこまでは解るかい?」

「う、うん。なんとなくだけど」

「よろしい。実は、君の中にはもう1セットのチップセットと、今は未使用の記憶装置が埋め込まれているんだ。つまり君の体にはもう一人、ナナとは別な人格が形成可能なんだ」

「それって、“二重人格”って事?」

「ああ、そうだね。正にそれさ」

「そのもう一人がタカ、あなたなのね?」

「そうなんだ。僕の心臓が止まったら、それが起動して僕という人格を形成する」

「でも、記憶は? タカの記憶が無いと、タカにはなれないんじゃない?」

「その通り。いい質問だね?」

「茶化さないで」

「あはは、ごめん」


タカは、最近では珍しく饒舌だった。それはナナと、元来はタカの得意分野だった領域の話をしているからだった。

一方ナナは、そんなタカを見て懐かしさと頼もしさを感じ、嬉しくなるのだった。