それから数ヶ月が過ぎた。


「ただ今、ナナ」

「あ、タカさん、お帰りなさい」


タカは、町で買い込んだ沢山の食料品や雑貨類をテーブルの上に乗せた。


「いい匂いがするね?」

「でしょ? 今日はね、クッキーを焼いてみたのよ。ひとつ食べてみる?」

「そうなんだ? じゃあ、ひとつ味見してみるかな」

「味見だなんて、失礼ね。はい、アーンして?」

「アーン」


ナナは、素直に口を開けて待つタカの口に、葉っぱの型で焼いたクッキーを入れた。タカはそれを、ポリポリと音をさせて食べた。


「どう? お味は」

「うん、とっても美味しいよ」

「そう? 良かった……」


(この人ったら、私が作った物は何を食べても「とっても美味しいよ」だもんなあ。本当に美味しいって思ってるのかしら。今度試しに、お砂糖とお塩をわざと間違えてみようかしら……)


そんな事を思うナナだったが、もちろん口には出さなかった。