「そう言ってもらうと嬉しいが、全く違うよ」


タカはそれまでとは違い、低い声でそう言った。表情が曇ったように見えるのは、ナナの気のせいだろうか……


「人間には本能があり、欲求がある。それは生きる物全てだが、生きるために必要な事だ。しかし僕は……生きてない。物を食べたりは、リアリティを追求した天馬博士がそうプログラムしたからで、食べたいと思ってする事はないんだ。他の事も……」

「タカさん……」


ナナはタカに同情し、胸が締め付けられる思いだった。


「初めて名前を呼んでくれたね?」

「あ……」

「じゃあ僕も、これからは“君”ではなくナナと呼ぶよ。いいだろ?」

「はい」


「これからは僕の事をもっと知ってほしい。僕も君、じゃなかったナナの事を知りたい」