人里離れた深い森の奥に、人知れず建つ古びた洋館があった。

焦げ茶色にくすむレンガの壁一面は蔦に覆われ、一見すると無人と思える建物であったが、窓を覆う厚手のカーテンの隙間から覗く淡い光が、住人の存在を告げていた。

その洋館には、ある一人の少女が住んでいた。

少し前まで、少女は唯一の身内である父親と暮らしていたのだが、その父親はほんの数日前、心臓発作で他界していた。


少女の名はナナ。
ナナには、生まれつきある特殊な能力があった。その能力が故に人と接する事が苦手で、いつしか洋館に篭もり、人前に出なくなっていた。

食料や自家発電の燃料やその他、生活に必要な物は全て父親が町から仕入れてくれていた。だが、その父親はもういない。


(これから私は、どうやって生きて行けば良いのだろ……)


ナナが途方に暮れていると、コンコンと扉を叩く音がした。