「ごめん。嫌だった?」


ううん。嫌じゃない。
むしろ嬉しい。


―花音―


あなたが私をそう呼ぶのが、たまらなく嬉しい。

でも、素直にうれしがれない私がいて、つい目をそらしてしまう。



嬉しいの。本当に。


気付けば視界が真っ暗で、もう1人の私が嘲るように笑ってる。



―本当に嬉しいの?


そうよ。本当に。



―なら彼は、私を受け入れてくれる?


わからない。



―巻き込むつもりなの?

ううん。巻き込みたくない。



―なら、浮かれていないで、現実に戻ろう。


…そう、だね。私の居場所はここじゃないもの。



―花音…?―




あぁ、でも好きだな。この落ち着く、適度に低い声。



「花音?起きて。終業式終わったよ。」



終わった?


なにが?


終業式…?


はっ!終業式!残ってるの私達4人だけじゃん!

恥ずかしい…



「まったく、特Aだからあまり言われないけど、気をつけろよ?ごまかすの大変だったんだぞ。」


「ごめんー。友香。なんか久しぶりにうとうとしちゃって…」


「めずらしいな。じゃ、行こうぜ教室。担任がお待ちだ。」


「立てる?ふらつかない?」


「大丈夫!立てるよ!」


顔が熱くなるのを感じた。たまらなくて、


目をそらす。


あぁ、私は、


いくら理屈を並べても、

いくら現実の世界の私が嘲っても、


いくら拒絶したくても。






この想いは消せないのかもしれない。


なんていう名前なんだろう。


知りたいな…