「―…わかりません。私には、わからないんです。」



見えないフり。


聞こえないフり。


それが一番良い方法。今までだってそうだった。

大丈夫。間違ってない。


「…悠樹?帰って来たの?隠れてないで、こっちに来なさい。」



えっ!聞かれた?ていうか何て言えば良いの!?

「あ、えぇっと、おかえり…?」


やばい。ずれてるよ返事(?)


「ちょっと、何か言う事あるでしょ?どう。これ。」



めーぐーみーさーん。
余計な事言わないでよぅ…。恥ずかしい。



「えっと、あの、やっぱ似合わないよね。私には」



あーうー。困ってるよー。


もとからあんまり華やかなの似合わないしなぁ。


「う…ううん。似合ってる。」


「ありがとう。」


見えないフりはとても楽。



「綺麗、だから。」


「え…」



でもね、どうしてかな。あなたには効かないの。

見えないフりが苦しいの。言えない。


―『ばいばい』


言いたい。


―『そばに居て。』



「かわいい。」


「あ、ありがとう…」



気付かせられるの。あなたといると。


見てしまうの。


この気持ち。だけど、


あなたの為に。


見えないフりをしていよう。


どうか、幻の中で幸せでいて。


お願い。


他にもう、望みません。