「ただいま。って、花音、まだ居るの?」


玄関にはローファーがまだ残っている。



―「わからないんです。」



おわ、まだ話してる。女ってすごい。


もう4時間は話しているんじゃないか?



「恋なんかしたことないから。悠樹君が好きなのかどうか、わからないんです。」



え…僕の話?



「私は今まで独りでした。それでも平気だったんです。


でも、最近は寂しくて、どうして、悠樹君がいないんだろうって。」



花音?



「愛さん。さっき幸せにできるって言いましたけど、きっと私にはそんな事できません。


私は私ですら、好きになれないから、誰か他の人を好きになるなんて、できるはずがないんです。

そうでなくちゃいけない。」



見えないフり。


聞こえないフり。


君はいつまで現実に縛られるつもりなんだ?



「花音ちゃんは、人間よ。人間はね、感情を表現できるの。


今の花音ちゃんの顔、


―嘘ついてないよ。」



どんな顔?


期待してもいい?



「―…わかりません。私には、わからないんです。」



見えないフり。


聞こえないフり。


君はいつまで、現実に縛られているつもりなんだ…?


いつまで、自分を縛るの?