「―君は犯罪者か?―」

人間として、その質問はありえない。そう思った。



そう思ったんだ。確かに。



「違います。」


でも、何も言えなかった。


怖くて、何も言えなかった。


「―っいやぁぁぁぁ!―」


「彩野!」


守れなかった。


そもそも、守るつもりもあったのか?


「前田…。やっぱり、こっちに来る間に何かあったんだろ?」


「…。」


話すべき事なのか?


「どうなってるんだ?なぜ急に倒れた。」


「花音ちゃんはね、あの2人の第一発見者なんだよ。」


「それがどうした。」


「それはわからないけど、多分さっき玄三郎がたてていた『靴音』。あれが…」



「フラッシュバックを引き起こしたのか。」


そんな。


「そういえば、直人が花音の家の跡地の買い手が見つかったって…」


家?遺産は花音が相続してるんじゃないのか?


「…それに、またバイトクビになったって。


噂が広がって。」


『―伯母さんは、私をこの町から追い出したいみたいなんだ―』


もしかして奪われた?


そして僕は気付いた。


彩野はまだ、手をつないだままだった。


彩野は最後に僕を頼った。


僕は気付いてあげられなかった。