大人が嫌い。


大嫌い。


「聞く所によると、君は成績優秀、品行方正、文武両道らしいな。」


そんな事で私を量らないでよ。


「そんな事は、今関係ないでしょう。父さん。」

ねぇ、助けて。


「ひとつ聞いてもいいか。」


「…なんでしょう。」


お願い。話しかけないで。聞かれる事は、わかっているから。


「君は犯罪者か?」


ほら、やっぱり。


大人が嫌い。自分さえよければ、面倒に巻き込まれなければ、


他の人が何を思おうと関係ないのだ。


「どうなんだ。」


「違います。」


「なら、いい。話は白紙だ。」


「へ…いいの?玄三郎。(げんさぶろう)あれだけねばってたのに。」


「どうせ、これも茶番だろう。光(ひかる)?何か冷めたよ。」


「まぁ、ここまで抵抗されるとねぇ…」


頭がぐらぐらする。


そういえば、朝から気分悪かったっけ。


周りの会話に集中できない。


「彩野…?大丈夫か彩野!?」


「どうした?体調が悪いのか?」


近付かないで。


コツ、コツ、コツ…


いや…


―パタ、パタ、パタ…―

血。


血の海。


血のニオイ。


よく知った、2人の…―

「っいやぁぁぁぁっ!!」


そう叫んだ瞬間。私は意識を手放した。


まだ、悠樹君の手を、握ったままだと気付かずに。



知らずのうちに、彼に頼ってしまった事に、気付かずに。