real world

〈花音〉



進み続けると決めた。


後戻りはしないと誓った。


過去を背負い、


一生引きずっていかなくてはいけないと理解した。




『始めた事は、終わらせなければいけない。まだ、終わってない。』




今そう言った、目の前にいる老人も、そう決めた1人だ。



もう76になるその老人は、5年、獄中にいた。


そして今日、



彼は外に出て来た。



私は今日、23歳になる。


社会人になって、まだ1年目の、夏。




『だから、謝るのは、わたしが死ぬ間際でかまわんかね?彩野さん。』


「いいえ。謝罪はいりません。」


『いらない?』


「はい。」


『実に君らしい答えだな。』


「謝るなら、早く始めた事を、終わらせてください。そして、まだまだ生きてください。それでけっこうです。」




私はそう言って、彼のいる部屋から立ち去った。