私はあたしでいることに、長いこと存在意義を見出だしていた。
私はあたしのもので誰のものでも、たとえ親のものにもなるつもりはない。
そんな感じの主張がしたかったのかもしれない。
まぁ、若かったのかも。
そう主張しないと、私の肩書きや見た目で私の価値が決まっているようで、世界が私の意味を勝手に決めてしまっているようで、
たまらなく嫌だった。
『えー、だからここはボイル・シャルルを用いて…』
ガラにもなく考え込んで授業を聞かずに窓の外を見ていた。
昼休みは終わり猛暑の外に代わって涼しい教室内は眠気を誘った。
眠ろうかな…保健室へフケにいこうか。
あー、でも真子ちゃんうるさいかなぁ…
『上杉ー。この気体の分圧は?』
「50hPa(ヘクトパスカル)です。」
『はいせーかい。じゃあこの気体の質量を…彩野ー?』
「32gでーす。」
『はい正解。』
そういや花音が真面目に授業聞いてそうなとこ見た事ないな。
いつも外を見てるか目線が明らかにあさっての方に向いている。
今もそうだ。
花音の机の上には化学にもかかわらず数学の問題集が。


