「悠樹君今日仕事は?」
「深夜に一個だけ。」
「そういえば、海斗君、元気?」
「うん。心配だったけど、うまくやってるよ。あいつには、悪いことしたなぁ…」
海斗は恋奈を射殺した犯人が捕まったという以外、何も話してない。
僕ら繋がりの人間全員に事情を話す訳にはいかないから。
「…知らなくていい事も、あるよ。」
「そうだね…。」
死んでしまった者はかえらない。
命はひとつで、
僕らは不安定な幻の上を歩いている。
ほんのちょっとしたことで、現実に堕ち、
辛さを知る。
生きるのが怖くなる。
でも、
それでも、
「悠樹君。」
「ん?」
「あがってく?」
目の前には花音が借りているあのアパート。
もうこんなとこまできてたんだ。
「そうだなぁ…仕事ここから直で行こうかな。」
花音と、一緒にいたいから。
「ホント!?」
「うん。」
子供みたいにはしゃぐ花音を、
この先
手放す事なんてないんだなと思うと、
ちょっとの安心感と、
手のひらサイズの幸せが、
僕の目には輝くようにみえた。


