「―花音が憎むべきは、僕かもしれないな…―」
動けなかった。
「―そんなっ…!―」
あれだけ作った笑顔が消えた。
私は何を、
しているんだろう。
バカみたいに、
他人を批判して、
傷つけて、
無神経な言葉をあびせて。
「…悠樹君は、私が嫌い?」
「好きだよ。今でも。多分、何があっても。」
「嘘つき。嫌いなんでしょ。」
「花音は…?」
「ん?」
「花音は、僕が嫌い?」
扉越しに、沈黙が広がる。
「…好きだよ。そうに、決まってるよ。」
「そっか。」
「…好きだから、なくしたくなくて、怖いんだよ。
生きてるから、辛くて、愛しいんだ。
悠樹君がいるから、私の世界はカラフルで、明るいの。
直人がいるから、楽しいの。
友香がいるから、笑えるの。
結木の家があったから、私、悠樹君に会えたの。」
「そっか…。」
「そうだよ。」
「花音は、優しいね。」
優しいね。
いつだって、
自分の状況がどんなにひどくても。
人を笑顔に変えられるお姫様。
ねぇ今気付いた。
私
ずっと
花音を妬んでいたんだ。
でも
それでも、
大好きなんだ。
大好きで、
妬ましいんだ…


