『―提案はごくシンプル。“ファイル”をこちらに渡すかオトモダチと恋人を死に導くか。―』



男は楽しくて仕方がないという顔をしてほほ笑んでいる。



結木 神楽。



聞いたことがある。


結木 相楽の弟にして一族からは厄介者扱いされている。


そして彼の息子が次期当主と決まっている。


僕は出来うる限りの知恵をふりしぼる。


友香を掴んでいるスーツ男は武器は持ってなさそうだが距離がある。


神楽を刺激すれば何をするか分からない。



「なぜ僕の命をねらう。『ファイル』が手に入らず結木の直系が生きていたらそんなに不都合なのか?」


『―君には何にも聞いてないよ。そこの小娘に聞いているんだ。―』



話も通じない、か。


どうするか。


何かないか。


なにか…!



―ドシュ!―




『いっ!!?????』



ドシュ…?い…?



「ったくよぉ。いてぇじゃねぇか!マジで意識とんじまってひびったよ。」


『―貴様…!意識が!?―』


「あー、まぁ車に乗せられた時からあったな。ふりだよふり。このおっさん意外と弱いな。」



友香は僕と目を合わせるとニッと笑った。


してやったり。の笑顔。まったく、こっちはビックリすぎて何にも反応出来ないっての。



「抵抗してもよかったんだけどな。せっかく祖父さまのくれたチャンスだ。棒に振るなよ。」