real world


「え―?はいそうですよ。彩野 花音です。恋奈ちゃん…だっけ?」


「あ、はい。前田 恋奈です。兄がいつもお世話になってます。」


「いえいえー。私のほうがお世話になってますから!」



彩野さん。という方は、雲みたいな人だった。


こちらの聞きたい事をのらりくらりとかわしてすり抜けて、後に残るのはどうしてという疑問ばかり。



「花音、どうしてここにいるんだ?」


「カウンセリング、受けにきたから。この前のは薬貰いに来ただけだったし。」


「そう…」



兄様、顔が赤い。


熱かな?(←天然)



「あたし、帰るな。これからパーティーがあるんだ。」


「そうなの?じゃ、気を付けてね友香。」


「…おう。」


「ありがとうございました。お見舞い、嬉しかったです。」



上杉さんはこちらこそ、とほほ笑んで帰っていった。


でも寂しそうに見えた。

疑問ばかりが残る。



「あの…彩野さ…」


「あ!そうだ!私恋奈ちゃんの服借りっぱだった!!ごめんね…今度持って来るから!」



そう。疑問ばかり。





どうして?




まるで、私が話してはいけない事を話そうとしているのを遮るように。





この人は何から逃げているんだろう。