「え!同じのにしちゃうの?」



花音はとたんに顔を赤くした。


あぁ、やっぱり、そうなんだ。


好きなんだ、前田悠樹のこと。



「何か不都合でもあんのか?」


「ううん別に…」


「そう?じゃあ早くメイン選ぼう。」


「うん。」



花音は顔を隠す様に下を向き続けている。


いつからだろう。花音がこんな風にいろんな事を隠す様になったのは。


いろんな事を自分の中にため込んで、そのまま誰にも話さなくなったのはいつからだろう。


あの事件の後、彼女を取り巻く環境は最悪だった。


人の欲望が交錯する、


吐き気を誘う様な、


死にたくなる様な、


あの環境。



人を絶望へと導く、


あの感じ。





――――……………