***** 「おい、今の追いつけただろ!?」 鋭い辻村くんのパスに、パスの相手が追いつけず、ボールがラインを割った。 いつもなら表情を顰めるだけの辻村くんが、初めて、声を荒げた。 朱音ちゃんとふたりで練習を見ていた私も、そして周りの部員も、驚いたように辻村くんを見る。 「……仕方ねぇだろ?あれは追いつけねぇよ」 パスの相手が、癇に障ったようにそう言い返すと、辻村くんは一層表情を厳しくした。 ……いや。 追いつけた。 本気で走れば。