「……辻村くんがうちの学校を選んでくれてよかった」
再会できて、よかった。
もしも。
もしも、彩織さんや佐竹くんとうまくいったままだったら、辻村くんはずっと藤桜にいて。
そしたらきっと、もうこんなふうに会うことなんてなかったと思うから。
こんなふうに、不器用でぶっきらぼうな辻村くんのことを好きになることもなかったと思うから。
初恋はきっと、小学生の頃のまま止まっていて。
また始まるなんて、動き出すことなんてきっとなかった。
「よく考えたら、こんなふうに一緒に修学旅行に行けるなんてまさかだよね」
「確かにな」
穏やかな表情のまま頷いてくれた辻村くんに、私はすごく安心して。
さっきまでお腹の底でズクズクと質量を持っていた罪悪感が、いつのまにか綺麗に消え去っていた。
さっきまでの寂しさも嘘みたいに感じない。


