いきなり顔を上げたことに驚いたのか、はたまた予想以上に不細工な泣き顔に引いたのかは分からないが、辻村くんは目を瞠った。
「……そうじゃなくて。
……彩織さんに会えなんて、ちゃんと話した方がいいなんて、何も知らないくせに言ってごめんなさい」
なんとか嗚咽をこらえてそう言うと、辻村くんは今度ははっきりと驚いた顔をした。
「……謝ることじゃないだろ」
「でも」
「彩織に何を言われたかは知らないけど、俺は彩織が思うほど弱くないし、むしろこの学校に来れてよかったと思ってるから」
そう言って、辻村くんは私を安心させるように微かに笑った。
「あんなことがなきゃ、藤桜やめようなんて思わなかったしな」
「……でも」
「さっきから、でも、ばっか!いいんだよ、俺がいいって言ってんだから」
そう言って。
ふわりと、笑った。
その笑顔が、辻村くんの言葉を真実だと表しているような気がして。
私は、どうしようもなく胸が熱くなった。


