「んなわけねぇだろ。そんなことでわざわざ女子部屋まで来るか。
……電話してきたお前の声が、明らか具合悪そうだったから気になって電話したんだよ」
「え」
「そしたら電話でないし。坂梨さんに電話してみれば体調悪くて旅館戻ったとか言うし。しかも、お前のこと考えたら自分は傍にいてあげられないとか言ってるし」
「だ、だからって普通、来る!?」
ここ女子部屋だよ?
一応男子は来ちゃいけないことになってるよ?
「来るだろ。……だってお前、絶対こういうの苦手だろ?」
きっぱり言い切った辻村くんに、私の瞳からはどうしようもなく涙が落ちた。
隠すこともできないくらい、無意識だった。
「苦手、って……」
「身体が弱ってるときって気持ちも弱るもんだろ。普通はここで誰かに頼ればいいのに、長谷川はそういうの苦手そうだし」
辻村くんの言葉は的を射すぎていて、なにも返せない。
だって、頼れないよ。
……一緒にいて、なんて。
さびしいなんて。
そんな簡単に、言えないよ。


