「……あの頃の私は、本当に弱くて。ひとりになるのが怖くて。……本当に、馬鹿だった」
彩織さんがそう呟いて、今にも泣きだしそうに顔を歪めた。
そんな様子が痛々しくて。
だけど、私には何も言葉をかけることができなかった。
「あのとき、真二くんは湊ちゃんじゃなくて私を選んでくれたの。ずっと一緒にサッカーをしてきた、親友、だったのに」
……そうだったんだ。
辻村くんと佐竹くん、もともとはそんなに仲が良かったんだ……。
「……それがどういう意味を持つかなんて、私、何も分かってなかった。湊ちゃんから真二くんを奪ったこと。真二くんから湊ちゃんを遠ざけたこと。
……すごく、後悔してる」
そう言った彩織さんの声は、震えていた。
「はじめは、満足だったよ。湊ちゃんがいなくても、真二くんが傍にいてくれて。幼い想いだけど、ちゃんと、好きだった」
「……はじめは?」
彩織さんのその言葉が引っかかって訊き返すと、彩織さんは小さく頷いた。
「……そう。すぐに、罪悪感でいっぱいになったから」
真二くんと一緒にいるのがつらくなるくらいに────。
消え入るような声で、彩織さんはそう言った。
「どういうことですか」
彩織さんのために、親友との仲を壊したのに。
なのに、彩織さんはそれでも満足しなかったの……?


