だけど、引き下がるわけにはいかなかった。
もし、湊壱を失ったとしたら。
その寂しさを埋められるのは、自分にとってはもう真二しかいないと思ったから。
彩織にとって、本当に心を許せるのも、
一緒にいて胸が高まるのも。
湊壱と真二だけだった。
「……いいよ。付き合おう」
真二は、彩織の言葉も気持ちも、深くは追及しなかった。
ただ、彩織の言葉にそう返して優しく引き寄せると、ゆっくり、抱きしめた。
今思えば、真二は彩織の弱さも、好きだからという気持ちだけで告白してきたわけではないことも、分かっていたのだろう。
だけど真二には、彩織を突き放すことなんてできなかったのだ。
幼い決断。
それが大きな過ちだったと気付くのは、それから少し経ってからのことだった。
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