それから、真二が彩織と恋人のような関係になるのに時間はかからなかった。
……恋人のような。
厳密には恋人ではなかった。
なぜなら彩織も真二も、決定的な言葉はなにも口にしなかったのだから。
それでも、退院して学校に戻ってきた真二と彩織の関係は、傍から見れば間違いなく「恋人同士」だった。
実際、ふたりはキスもしていないような関係だったが、それを周りが知るはずもなく。
噂だけが独り歩きした結果、それが湊壱の耳に入るのは必然だった。
「湊、部活行……」
清掃を終え、いつもどおり湊壱と一緒に部活に行こうと教室に入った真二が見たのは。
両手で顔を覆い、明らかに嗚咽を漏らしている彩織と、冷たい表情で彩織を見下ろす湊壱の姿だった。


