ねぇ。 ねぇ。 今の、なに……? 「……馬鹿」 どうしてそんなふうに私に触れるの。 勘違いしそうになる。 きみの鼓動が、私と同じくらい早かったんじゃないか、なんて。 私と同じくらいドキドキしたんじゃないかって。 「……そんなわけないのに」 ひとりぽつんと取り残された私は、しばらく立ちつくしたまま、歩き出せないでいた。 彩織さんと話すように薦めたのは私なのに、もう後悔してる。 不安で不安で仕方ない。 私って、なんて勝手で、なんて、弱いヤツなんだろう────。