なんだか全てにドキドキして、だけどすごく温かい気持ちになって。 どうしようもなく、泣きたくなった。 「……辻村くん」 「……」 私の声にもこたえることなく、辻村くんは抱きしめる腕をゆるめることもせずに。 「辻村くん……」 「……悪い」 何度目かの呼びかけの後、ようやく腕が解かれる。 心地良い体温が離れていく。 「……気を付けて帰れよ」 「……う、うん」 私が頷いたのを見て、辻村くんは彩織さんの待つ喫茶店の中に消えていった。