夏に比べればすっかり温度の低くなった空気。
ちょっと前まで、この時間だってまだ明るかったのに、今じゃうっすら空に浮かんだ月が見える。
ご近所さんなのに、辻村くんと一緒に帰ったことって本当に数えるくらいしかない。
私は徒歩で辻村くんは自転車だからっていうのが、たぶん一番の理由。
きっとこれからもそうなんだろうなぁ、って、辻村くんの背中をぼんやり眺めながら思った。
「……あのさ」
しばらく黙ったまま歩いていた辻村くんが唐突に振り返る。
自転車を支えたまま立ち止まり、まっすぐに私を見るから、ドキンと心が不意に音を立てた。
「なに?」
必死に平常心を装ってそう返す。
辻村くんは、一瞬視線を泳がせて、しかしすぐに再びまっすぐ私を見てくる。
「……前は、ごめん」
「………前?」
言い辛そうに言ってくれた言葉。
でも、意味が分からずに私は首を傾げた。
一体、なんのこと?


