早足で歩を進める辻村くんに引っ張られながら、私は必死についていく。
やがて家に着き部屋に戻ってようやく、痛みさえ感じるほどに強く掴まれていた手首が解放される。
「……」
どうしてか、ぎこちない沈黙が落ちた。
「つ、辻村くん、いいの……?」
私はその沈黙が痛くて、気がつけばそう言っていた。
それしか話題が浮かばないなんて、我ながら情けなさすぎる。
「……いいって、何が」
「だって、あの子……。
辻村くんと話がしたいんじゃないの……?」
「俺は話なんかないからいいんだよ」
頑なにそう言って彩織さんを拒否する辻村くんに、私は悲しくなった。
元カノ、なんだよね?
なら、思いを通わせた時間が、ふたりの間には確かに存在したんだよね?


