「何の用?橋本君」


「やだなぁ、『橋本君』なんて余所余所しいじゃないですか。『壱吾』って呼んで下さいよー」


「その件は丁重にお断りしたはずよ。それより何の用?」


顔に笑みを貼り付け、それ以上近寄って来られないように牽制(ケンセイ)をすれば、橋本君はさして気にする様子も無くヘラリと笑った。


「明日はバレンタインですね」


「……だから?」


「俺、チョコレート大好きなんで、何個でも待ってますから」


ニコニコと笑う橋本君に、ニッコリと微笑んで見せる。


「どうしてそれをあたしに言うの?」


そして、自分の中で最高に冷ややかな視線を送った。