一瞬目を見開いたお菊だったが、

すぐにいつものような笑顔で、そう答えた。

・・・

お菊の笑顔に、

この時ばかりは、

私も自然な笑みをこぼした。

・・・

牛車に揺られ、

目的地に静かに進んでいると、

道端に、ところどころに、

たくさんの牛車が止められている。

その中には、

帝の正室、側室たちもパラパラといた。

私は俯いたまま、

牛車はどんどん進んでいく。

・・・が。

「止めてください」

私はハッとして、牛車を止めた。

・・・

右前方に、

見覚えのある牛車が・・・

・・・そう。

光源氏の物だった。

私は、掛けられた薄い衣を

開ける事をせずに、

光を見つめた。

・・・光もまた、

私を見つめているのが分かった。