知ってる。

この温かな腕は、

私の愛おしい人。

焦がれて焦がれて、

待ちわびた人…

・・・

私は目を閉じたまま、

その人を抱きしめた。

・・・

「光…会いたかった」


「…朱音。私も同じ気持ちだ」

・・・

ああ。この声。

心の中に沁みこんでくるような、

綺麗な澄んだ声。

・・・

「帝の婚儀。

日にちが迫ってきたな?」


「・・・うん」



「・・・ここから逃げてしまおうか?」


「・・・え?」


「帝のものになるくらいなら、

今の地位もすべて捨てて、

ここから・・・

朱音と共に、知らない場所へ・・・」