「・・ね、朱音」

・・・

誰かが必死に私の名を呼ぶ。

私は重たい瞼を、

必至に開けた。

・・・

一瞬かすんだ目の前も、

すぐに元通りになり、

目の前には涙を流すママと、

安堵の溜息をつくパパの姿が映った。

・・・

「私…」


「窓際で倒れてたのよ?」


「ずっと意識が戻らず、

もう目を覚まさないんじゃないかと

焦ったぞ」


「…屋上から、落ちて」

・・・

私は確かに、

屋上から落ちた。

だって、

手には、あの羽を握りしめているから。


「落ちてたら死んでたわ。

よかった・・・

目を覚ましてくれて」

ママは泣きながら言った。