「この世は、なんと皮肉なものか」

外を眺めたまま、帝が言う。

私はただ黙ったまま、

帝の言葉に、耳を傾ける。

・・・

温かな帝の手は、

私の手を優しく握ったまま。

私はその手を見つめていた。


「…朱音」

「・・・は、い」



「その子を…産みなさい」

「・・・え?!」


・・・

突然の思いもよらない言葉。

自分の子でないのは明らか。

それなのに、帝は産めと言う。

・・・なぜ?


「授かった命だ・・・

無下にはできぬ・・・

そのお腹の子は、私の子供として育てる」


「・・・」

「朱音は何も気にせず、

体の事だけ、子供の事だけを考えよ。

さすれば、元気なカワイイ赤子が生まれよう」