空が白み始めていたが、虎助はまだ苦しそうに眠っていて、起こすのを戸惑わせる。

 しかし、虎助にとっても、このままでいいはずがなかった。

 私は起きなければいいと思いながら静かに肩を揺すると、虎助は直ぐに目を開けた。


「少しは休めましたか?」


 虎助は、何も言わずに上体を起こす。

 一晩、といっても数時間で傷がよくなるわけもなく、やはり辛そうだが歯を食いしばるだけだった。


 部屋の中が僅かに明るくなると、布団は血で汚れているのがわかった。

 流れて汚れたものでなく、装束に染みたもののようだった。

 止血は済んでいたのだ。


「内密に処分致しますから安心して下さいませ」


 立ち上がった虎助に言った。


「……。」


 虎助は何も言わずに私を見下ろしている。


 まだ辛そうだが、なんとか大丈夫そうだと、少しホッとした。