「おい。大丈夫か?」
「え、う、うん。とりあえず…。」
「とりあえずってなんだよ笑
まぁ、いーや。こいつ、どーすんの?このままは流石にやばいよ?」
あ、たしかに。
この人、捕まっちゃう。せっかく助けてくれたのに…。
私がこの人の人生狂わせちゃった。
ん?
この人…?
「あ、あんた誰!?」
そういえば、私この人の名前知らなかったんだった。
「あ、俺?
雪だよ。真っ白な雪。」
…バカですか?この人?
「…」
「…。あぁ、ごめん。俺、雪に憧れてて。つい、言ってみた。」
「…。」
「…。」
「…。で?名前は?」
「…と。」
「え?」
「南沢 隼人」
一瞬、ほんの一瞬だけ、名前を言いたくないように見えた。
だって、地面をみつめたその瞳が、悲しそうだったから。
でも、たぶん私の思い違い。
「で、これどうしたい?」
え…。どうしたいって聞かれても…。
「俺が始末しようか?」
いままで散々ひどいことされてきて、それでも、それでもやっぱり、親を殺すことなんて私にはできない。
「大丈夫。誰にもばれたりしないから。」
「うん。」
ありがと。
ありがと。
ありがと。
今日初めて会った人に、親殺させて、それに死体まで片付けさせるなんてひどい女だね。
ひどい娘だね…。
「まぁ、俺は全然人殺しとか気にしないけど、これからどーすんの?住むとこ無くなったけど。」
「あ…。」
全然考えてなかった。
「あの、泊めてもら…」
「無理。」
「あ、すいませーん。」
そんな即答しなくていいのに…。
「俺んち、施設だから。女泊めるわけにはいかないんだ。」
あ、施設…。
「なんかごめ…。」
ドンッ
「謝んな。そういう同情とかいらないから。」
いきなり壁に押し付けられて、さっきまでとは全然違う目で私の心をみつめた。
「うん。」
私が言うと離れてくれた。
でも、私の手を握った。

