リビングに入ると、お母さんが晩ごはんをきれいにテーブルに並べていた。


「勝手に侑くんの分作ったけど、食べていくわよね?」


「…あ、はい。なんかすいません。」


『食べていくわよね?』と言ったお母さんには、きっと誰も断れない。
家のお母さんは、何かを断った後がめんどくさい。
世話好きでお節介なお母さんは何が何でもやってあげようとするから。


それを知っているから侑も断れないんだ。


「恵子さんには私が言っとくはね。」


「はい。」


ちなみに恵子さんとは、侑のお母さん。


小太りな私のお母さんとは正反対で、痩せていてすごくきれいな人。


お母さんとすごく仲がいい。


私はいつも座る席に着いた。


侑は私の隣に座る。この席は昔から変わらない。


その侑の前にお母さんが座る。


お父さんはいつも仕事で遅くなるから、食事は別々。


「侑くん、ホント久しぶりよね~。最近全く家に来てくれないんだもの…。」


今日のメインディッシュのハンバーグを食べながらお母さんが話す。


「…あ、最近は部活で忙しくて……。」


「あら、部活?そういえば侑くんはバスケ部だったかしらね~。」


「はい。」


…部活で忙しい、か。


ホントは私と話しもしなくなったから、家に来なくなったんだろうに…。