鏡の国のソナタ

素奈多は、二つに割れた卵を両手に持ったまま、それをかわるがわる見比べた。

包丁ですぱっと切ったみたいに、きれいに二つに割れている。

その切り口は吸い付きそうなくらいシャープだ。

素奈多は、そうっと断面を合わせると、もとどおりにぐっと押してみた。


すると卵は、まるで磁石のS極とN極が引き合うようにぴったりとくっついた。

ちからまかせに再び引き剥がそうとしてみたが、駄目だった。

「え~? なんでぇ?」

さっきは簡単に開いたものが、今度は押しても引いても捻ってもビクともしない。


もとの卵に戻った不審な物体をまじまじと見つめていると、医学部の通用口に人の気配が近づいた。