鏡の国のソナタ

殻が不自然に肉厚で、ぷよぷよしている。

ちょうど、白身だけで黄身の部分がないゆで卵のようだ。

「……なに? これ?」

ぜったい、自然のものであるはずがなかった。


医療廃棄物……。


やっぱり、夜食用の卵なんかではないのだろう。

妙なシロモノを目の当たりにして、不思議そうに首を傾げていると、猫がミーと鳴いて素奈多の手の中の卵に手を伸ばした。

美味しそうに見えたのだろうか。

猫の前足が卵にかかり、ぷにゅっと白身のような部分を押した。

「めっ!」

素奈多は猫から遠ざけるように高く卵を持ち上げる。

猫を膝から下ろした。