素奈多は、机の上の小瓶をつまみ上げ、電灯に透かしてみた。

中で、髪の毛が一本光っている。

あの日から、この髪の毛は素奈多の御守りのようなものだった。

辛い受験勉強も、これがあるからがんばれた。

ぜったい、先輩と同じ学校に行くんだって決めて、一生懸命がんばった。

この小瓶を握りしめると、いつも先輩といっしょにいられるような気がして心強かった。

「九嵐先輩……」

ポッと頬を染めてつぶやくと、素奈多は小瓶を胸に抱いた。

こうして先輩のことを想うと、胸の奥がほわんと暖かくなってくる。

恋って心が温かくなるんだなと思って、素奈多は多幸感に酔った。