鏡の国のソナタ

もう一度、顔を見て、抱きしめたかった。

その頬に、額に、唇に、もう一度触れてみたかった。

それさえもかなわないというのか……。

九嵐は、辛そうに目を細めた。

「彼の遺体は秘密裏に処分されたんだ」

「そんな……」

素奈多は、もう、なにも考えることができなかった。

あとからあとから溢れてくる涙を拭いもせず、ただ、小刻みに体を震わせていた。