K大学付属高等学校の昼休みの教室で、素奈多は親友の斉藤花南(かなん)といっしょにお弁当を食べていた。

「それでねぇ、花南。九嵐先輩が、大丈夫って、あたしの手を握ってくれたのよぉ~……」

昨日、持ってきてしまった卵を御守りのように握り、素奈多は夢心地で語っていた。

素奈多のいつもの話を「はいはい」と聞き流しながら、花南はせっせと箸を動かしている。

「その話は何百回も聞きました」

それは、素奈多が中学二年生の夏だった。