私たちが通う伊佐早高校(いさはやこうこう)は極普通のところだ。
他と違うところといえば少し妖怪の数が多いような気がする。

今日も校門の前で妖怪が「おはよー」と挨拶をしてくる。
私は母に妖怪の声を聞いたらダメ、それに応えたらダメ、と言われてきたが
ここらへんの妖怪は危害を与えたりするような奴はいないので
私も急ぎながらおはようと挨拶を返す。

そしてやっと下駄箱につくが、見知った顔が下駄箱の前で教科書をぶちまけている。

『真琴おはよう。なんか、大丈夫?』

「おはよっ全然大丈夫じゃないよっ!大丈夫そうに見えるのっ?!」
うん、だよね、大丈夫そうに見えないよ。

北条真琴(ほうじょうまこと)は高1の時に私が「視える」ということに興味をもって
始めて声をかけてくれた人だ。それから話が合って仲がすごく良くなった。
クラスに馴染めたのもコイツのおかげだと思う。
だから私は感謝している。

「後3分しかないよっ!もぅいっそのことサボらないか?!」
と、高テンションで令奈が教えてくれる。
そんなこと言ったら真琴が怒るっていうのに…

「ちょ、バカじゃないの!サボったりするわけないでしょ!急ぐよ!」
あぁ、ほら怒られた。
ただでさえ時間がギリギリでイラッとしているのに…。

走ったおかげですぐにクラスの前に。
令奈はB組なので廊下で「後でねー」と別れを告げる。

そして真琴とA組のドアを勢いよく開ける。