極上御曹司のイジワルな溺愛


蒼甫先輩が言う通り、里桜さんは『雅苑』にとって大切な人。

彼女のブランド『チェリーブロッサム』のウェディングドレス目当てで、うちで結婚式を挙げる新郎新婦も少なくない。

だから友人の薫さんがブライダル衣装などを扱う『MIYABI』の社長になり、拠点もアメリカにしたと思っていた。

今回アメリカから帰ってきたのも仕事のためだと思っていたけど、そうじゃなかったっていうこと?

男女の仲に口出しするつもりはないけれど、心の中にモヤモヤしたものが残る。

「薫さん、心配ですね」

昨日のことや仕事のこともあるし、なにより薫さんは蒼甫先輩のお兄さんだ。

心配になるのは当然で、普通のことだと思っているのに、新聞を開いた蒼甫先輩は大きな溜息を漏らした。

「何? そんなに兄貴のことが気になる?」

新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる蒼甫先輩は、こちらを見ることなくボソッと言い放つ。

「気になりますよ。だって薫さんは……」

「言い寄られてたもんな」

話を切られて言われたのは、思いもしていなかった言葉で……。

「それって、どういう意味ですか?」

「ん? そのままの意味だけど」

「先輩、私に喧嘩売ってます?」

「別に」

飲み干したコーヒーカップをガチャリとソーサーに戻し、新聞をたたんだ蒼甫先輩がチラッと私を見る。