森の人

『また、あのオヤジにか』

にしては、声が近い。

振り返ったその先には、一人の女性が立っていた。

『目が合ってしまった』

何も見なかった事にして立ち去って行く…。
と、頭の中で描くシナリオ。

しかし、

「興味お持ちですか?」

「は?」『何に?』

肝心な部分は、心の中で呟く。

「あっ、お持ちなんですね」

強引に話を持っていく女性。

「え?」『いえ、持ってません』

完全に彼女のペースにはまっていた。

「涼しい所で詳しい話でも」

そう言ってその女性は、澤山の腕を掴んだ。

「いや、あの…」『興味ありませんから!』

そう言い切って彼女の腕を振り払い、去って行く…。
頭のシナリオだけは完璧だ。