思い出したんだ。

いつかの、言葉を。




『大人になっても忘れんなよ、今日のこと』



目を閉じた先。
居たのは、幼い隆史。




息が出来ないぐらい胸が詰まった。




ねぇ、隆史。
私、少し勘違いをしてたかもしれない。


私きっと。
ちゃんと隆史のこと好きだった。

好きだったんだよ。




本当はずっと思ってた。
思ってしまっていた。


支えてもらったお礼に付き合ってるって。
隆史が私を好きだから、付き合ってるんだって。



だけど。

違った。
違ったんだよ。




私、あの瞬間、ちゃんと。

ちゃんと、隆史のことが好きだった。









「行くよ」



掴まれた手。
胸が痛い。

苦しい。



ずっと私のことを引っ張ってくれた隆史は今、泣いてるかもしれない。



それが、苦しい。
だけど。





握られた手が嬉しいんだ。
そんな自分が嫌いで。



頭がぐちゃぐちゃで、おかしくなりそう。