たとえば、

あの瞬間に俺が何か返事をしていれば。
反対側のホームに行っていたら。
お前が好きだと、言っていたら。


何か変わっただろうか。



…いや。

多分変わんないんだ。



加藤は、きっと
相変わらずに、毎日を生きて。


俺も悶々と加藤のことを好きでいて。



よかったのかも、しれない。
あそこできっぱり断ち切ってくれて。






「よし、やるか」







いつか、
加藤が言ってくれた。


俺は季節を運ぶって。



あの時は、まだ夏。



今は秋。
だけど、もう冬になろうとしているよ。



加藤、
ちゃんと君の季節は巡っていますか?

こっちは。

加藤に会わなくなってからよくわかんないよ。


本当に季節を運んでくれていたのは
君の方だったのかもしれない。




多分、
俺は今も、君のこと変わらずに…

「…上本!進路のことでちょっと。

相談室こい」


「あ、はい」