「おい!ゆーいち!お前さっさとやれよ!」
「いや、ちょ、」
「あー!ごめんね、ごめんね。
こいつ男が好きだから、連絡先とか聞いても無駄だよー!」
「ちょ!お前!」
と、怒りながらもちょっとほっとしていた。
今日は文化祭当日。
一週間加藤と会わず、
クラスでの出し物の作成に没頭していた。
で。
そんな思い入れのある教室で
接客をおこなっているわけなんだが。
「お前さぁ、逆ナンぐらいしっかり自分で断れよ!
か弱い乙女かっつうの。」
「…だって、なんて言えばいいのか分かんないだろ…」
「そんなのテキトーに男が好き、とか、彼女いる、とか言っとけよ。」
「…嘘つけねぇだろ」
「……はぁ」
思いっきりつかれたため息。
ふてくされて時計を見てみれば、
「あ!交代の時間じゃん!」
「…え?あ、ほんとだ。」
…やった。
加藤に会いに行ける。
やっと会える。
同じ場所に居るのに会えないっていうのはなかなか苦痛だった。
「行ってくる!」
「あ!ちょ!待てよ!俺も」
走り出す勢いでエプロンを取って
加藤のクラスへ向かう。
「…お前、本当に亜紀ちゃん、好きだな」
「うるせぇな。
で、亜紀ちゃんって呼ぶな。」
俺だって下の名前で呼びたいのに。


